微粒子工学グループ

私たちのグループでは、1) “小さい粒子である微生物”を資源循環や環境浄化に役立てる研究、2) “小さい粒子”を環境に負担をかけずに合成する研究、3) “小さい粒子(微生物)”の表面特性を正しく評価し、その特徴を理解して応用する研究などを行っています。

まずは、“微生物を利用するレアメタルの資源循環システム“について、その研究内容を紹介します。図1に示すように、天然鉱石や人工鉱石(電子産業、化学産業などの廃棄物)を処理対象にして、鉱石原料からレアメタルを効率よく抽出する技術、溶液中に抽出された金属成分を濃縮・回収する技術、さらにナノ・ミクロサイズの高機能性粒子へと転換する技術について研究しています。これらの技術をうまく結び付けて、原料→高機能性材料→廃棄物→原料となるレアメタルの資源循環システムを創りあげ、循環型社会の構築に貢献できるように研究を進めています。

図1 希少金属の循環システム

とくに、微生物を利用して鉱石からレアメタルを抽出するバイオリーチング(図2)、溶液中の貴金属イオンをナノサイズ固体粒子として微生物表面に還元・析出させるバイオミネライゼーション(生物が金属加工!? 、http://www.nhk.or.jp/zero/contents/200803.html)は、環境にやさしいユニークな技術として注目されています。

図2 微生物反応器における海底鉱物からのレアメタルのバイオリーチング実験

次に、“微生物の付着現象の解明とその利用”について紹介します。微生物を用いたバイオプロセスは、従来の化学プロセスでは困難な反応が可能である一方で、反応容積当たりの速度が遅いため、その実用化は必ずしも容易ではありません。私たちは、微生物の細胞表層の特性と付着性の関係について調べています。また、この成果に基づき、微生物の付着現象を利用したバイオプロセスの高速化に関する応用研究も進めています(図3)。微生物の付着現象は、有価物生産や環境浄化で利用される一方で、食品汚染、医療器具汚染、金属腐食、虫歯、水垢など、トラブルの原因にもなっています。したがって、微生物の界面への付着メカニズムを明らかにすることは、工業、農業、医学などのあらゆる分野において、付着微生物の利用や駆除、微生物の付着を予防する上で極めて重要な課題です。

図3 固体界面に高密度固定化した微生物(環境浄化プロセスにおいて利用)

さらに、ナノ粒子が環境に及ぼすリスク評価に関する研究も行っています。近年、ナノテクノロジーの急速な進歩に伴い、ナノ粒子を応用した製品が現実に多数市販されていますが、ナノ粒子が生体に及ぼす影響は明らかにされていません。私たちは、生態系の底辺を支える微生物を対象として、ナノ粒子の生体影響メカニズムの解明を試みています(図4)。

図4 微生物にナノ粒子を暴露後の様子
(上:ナノ粒子の付着により死滅した菌、
中:ナノ粒子の取込により毒性を回避した生菌
下:細胞に付着したナノ粒子のナノレベル像)

このページの先頭へ