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微生物を利用するレアメタルの資源循環システム

 

レアメタル(希少金属)とは、地球上において存在自体が希少であるか、原料から抽出することが科学的にも経済的にも極めて難しい金属元素(プラチナ、コバルト、ニッケルなどの 30 種余り)の総称です。レアメタルは特殊な性質をもつため、ごく微量混ぜると半導体や電池の性能が飛躍的に向上するなどの効果を発揮します。今や携帯電話、液晶テレビ、ハイブリッド車など、ハイテク関連機器には欠かせない存在となり、レアメタルは“産業のビタミン剤”といえましょう。じつをいえば、レアメタルは全世界の 30 %近くが日本で消費されていますが、そのほとんどを輸入に頼っています。したがって、我が国にとってレアメタルの確保と安定供給は国家的にも急務になっています。

私たちは、天然鉱石や人工鉱石(電子産業、化学産業などの廃棄物)を処理対象にして、鉱石原料からレアメタルを効率よく抽出する技術、溶液中に抽出された金属成分を濃縮・回収する技術、さらにナノ・ミクロサイズの高機能性粒子へと転換する技術について研究しています。これらの技術をうまく結び付けて、原料→高機能性材料→廃棄物→原料となるレアメタルの資源循環システムを創りあげ、循環型社会の構築に貢献できるように研究を進めています。とくに、微生物を利用して鉱石からレアメタルを抽出するバイオリーチング、溶液中の金属イオンをナノサイズ固体粒子として微生物表面に還元・析出させるバイオミネライゼーションは、環境にやさしいユニークな技術として注目されています。

 
 

異相系反応を利用した無機ナノサイズ粒子の液相合成法の開発

 
バクテリアによる硫化物の合成

硫酸還元細菌が生産する硫化水素を沈殿発生剤として利用して、低環境負荷・低コストで金属硫化物が合成できる(実例:硫化ヒ素粒子 80 nm 程度)。


ソルボサーマル反応による金属カルボキシレートからの酸化物の合成

粒子の生成場が有機相であるために塩化物イオン等の無関係物質が粒子に混入せず、生体材料等の合成に適する(実例:安定化ジルコニア 5 〜 10 nm)。

廃水中の重金属を有機相(第3級カルボン酸)に抽出しても出発物質が調製でき、金属資源のリサイクルに貢献する(実例:鋼材硫酸洗浄廃液からフェライト 20 nm)。


マイクロエマルション法による無機ナノサイズ粒子の形態制御

マイクロエマルション(微小液滴分散系)を反応媒体として利用して、ナノ結晶と界面活性剤分子間の相互作用(例えば、静電的相互作用、配位結合)を制御することにより、ナノ結晶面への界面活性剤分子の付着性の違いを操作すると、形態(ナノドット、ナノロッド、ナノワイヤー)を制御したナノサイズ結晶が合成できる。

 
 

硫黄循環ミニ生態系を導入したゴミ焼却残渣からの重金属資源回収システム

 

約600万トン/年のゴミ焼却残渣(焼却灰と飛灰)が発生している状況のなかで、少しでも環境への負荷の少ない焼却残渣の処理プロセスを探求することは意義深いことである。本研究では、自然界の硫黄循環に関わる各種細菌の機能を巧みに利用したバイオ変換システムを提案し、そのクローズドシステムによるゴミ焼却残渣からの重金属(Zn, Pb, Cd,Cu)回収について実用化をめざす。具体的には、無機硫黄化合物の酸化能・還元能を有する硫黄細菌を利用して人工的な硫黄の循環経路(元素硫黄 → 亜硫酸イオン→ 硫酸イオン→ 硫化水素ガス → 元素硫黄)を作り出し、焼却残渣から重金属を液相に浸出させるとともに、浸出液に溶存する重金属を硫化物の沈殿として回収することを目的としている。

 
 

微生物の付着現象の解明とその利用技術の開発

 

微生物の付着現象は、固定化微生物を用いたバイオリアクターによる有価物生産、固定生物膜リアクターによる環境浄化、バイオリーチングなどにおいて積極的に利用されている一方で、食品汚染、医療器具汚染、金属腐食、配管の目詰まり、虫歯など、トラブルの原因になることも多い。このような微生物の付着現象は、身の回りや自然界などに多種多様に存在する界面において頻繁に観察されるにも関わらず、その基礎となる微生物の固体表面への付着メカニズムの詳細は明らかにされていないのが現状である。したがって、コロイド科学の側面から、微生物の表面の性質を知り、固体表面への付着メカニズムを明らかにすることは、工業、農業、医学などのあらゆる分野において、付着した微生物を利用もしくは駆除したり、微生物の付着を予防したりする上で極めて重要な課題であると言える。

本研究では、環境中の微生物に働く相互作用に着目し、微生物の表面性状評価、およびそれらの測定結果に基づいた微生物の付着現象に関する解析とその応用を試みている。

 
 
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