化学工学をもっと詳しく

現代の華々しいハイテクノロジーには化学工学の理論と技術が用いられています。次世代に向けて地球環境と調和したテクノロジーを実現するために欠くことのできない学問分野、それが化学工学です。

私たちの身の周りには、多種多様な製品が存在します。これらの製品の中には、一見、化学工学とは何の関係もないように見えるものがあるかもしれません。しかし、化学工学は多くの製品の製造に関わっているのです。化学工学は、原料から製品を工業的に生産する一連の工程、すなわちプロセスに関連するいろいろな問題を対象として、化学・生物・反応・分離・精製などの各種プロセスに共通した基礎理論を取り扱う工学として生まれました。

石油からの製品を例にあげますと、目的製品を得るためには、化学反応を取り扱うだけでは不十分で、原料の効率的な処理方法・輸送手段や熱エネルギーの有効な利用、さらには経済性と環境保全性についても考慮し、目的製品を生み出すのにもっとも適したプロセスの選定を行う必要があります。またひとつのプロセスだけでなく、いろいろな製品を同時に生産する工場内の各種プロセス全体をシステムとしてとらえ、その最適化も行う必要があります。

化学工学は、このように様々な因子を同時に扱う学問で、新現象の利用と新技術の確立→工学としての体系化→新分野への進出を繰り返し成長してきた総合的な学問分野なのです。このような歴史的背景から、最近ではハイテクノロジーを支える超微粒子、機能性材料や微生物等のミクロの世界から、地球規模の資源・エネルギーや環境のマクロの世界までの幅広い分野に進展し、様々な分野の境界に属する学際領域の学問として発展してきています。

化学工学課程(大学院では化学工学分野)では7つの研究グループが活動しています。教育面では、化学工学の対象分野に普遍的で基礎的な幅広い学問を身につけ、また社会的にも広い視野をもち、国際的にも活躍できるような人材を育成できるようにカリキュラムを編成しています。研究面では、微粒子、機能性複合材料、微生物、化学反応、分離、資源の有効利用などに関連する基礎的研究とそれらのプロセスの開発、制御システムの設計などについての応用研究を行っています。

全国の理工系学部のなかには「化学工学」や「応用化学」を含む学科が多数存在しています。どちらも「化学」に関わる分野ですが、どのように違うのでしょうか。

私たちの身の周りには、衣食住をはじめとして、医薬品、化粧品、電化製品、自動車など、化学工業で作られた製品や材料がたくさんあり、それらの恩恵にあずかっています。ケミカルエンジニア(化学工学技術者)は、ケミスト(化学者)が研究室で試験管とビーカーから得た成果をもとにして、反応や分離・精製などのステップを含む複雑なプロセスをつくり、それを安全に運転することにより、品質の良い製品を安価に消費者の手に届けるために貢献しているのです。(出典:「ケミカルエンジニアリング」化学工学会監修 橋本健二編 培風館)

わかりやすく言うと、「応用化学」は化学にまつわる知識をベースにしてさまざまな有用な物質の合成や分析の手段を研究していくのに対し、「化学工学」は産業や自然環境の中の化学的な仕組みを解き明かし、品質の良い製品を安価に消費者の手に届けるために高度にデザインしていく、といえるでしょう。

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